日本にもあった!
平安時代のシンデレラストーリー
昔むかし、幼い頃に母親を亡くした女の子が、継母にいじめられ、苦労をしながらも素敵な貴公子にめぐりあい、やがて、、、と言えばご存知、超有名な物語「シンデレラ」。
そんなシンデレラストーリーが、なんと日本にも、それも平安時代にあったんです!
それが、今回ご紹介する「おちくぼ姫」
作品紹介
高貴な生まれにもかかわらず、継母にいじめられ一日中縫い物ばかりさせられている姫君。
落ちくぼんだ部屋に住まわされていることから「おちくぼ」と呼ばれていた。
そんなある日、都でも評判の貴公子が姫君の噂を聞きつけて求婚。
貴公子の熱心なアプローチにより、姫君も好意を持つようになるのだが、そんな二人の前に数々の問題が立ちはだかる…果たして、恋の行方は?
日本の古典「落窪物語」を作家 田辺聖子が現代訳にした田辺流「王朝版シンデレラ」!
「おちくぼ姫」は千年以上もの間人々に読み継がれてきた古典「落窪物語」(平安時代/作者不詳)を芥川賞作家の田辺聖子さんが一部脚色&現代訳にした小説です。
古典というと「難しいのでは」と思いがちだけど、、、
心配ご無用!コメディ感もありスイスイ読めちゃう。
ここからはネタバレになるので、未読の方は一旦ストップを!
気にならない方はそのままどうぞ。
おすすめポイント
①安定のハッピーエンド!
ご安心ください。日本版シンデレラ「おちくぼ姫」も色々とツラい目にあいますが、最後はヒーローの貴公子と結ばれて幸せになります!
②”人間味”のある登場人物たち
姿かたちだけでなく心まで美しいヒロイン”おちくぼ姫”はぶっちゃけそんなに面白くない、、、
・・・さておき、そんな姫君にえげつないいじめをする継母”北の方”やそれに対し容赦ない報復をするヒーロー”右近の少将”などなど、上品で華やかな平安朝とは思えないぐらい下品、非常に人間味ある登場人物たちが魅力的に描かれています。また作品中には上級の貴族だけでなく、これまた魅力的なキャラの召使たちが主人公たちのために大活躍します。恋愛物ではあるのですが、どこかコメディ感も漂う大変面白い作品なのです。
③古の日本を発見!平安朝 恋の流儀!
平安時代の姫君たるもの、御簾(みす)の奥にいて、絶対殿方に顔を見せないもの。
そんな時代にあって、恋のきっかけとなるのがラブレターならぬ「和歌」。
作中、色々と恋心を伝える和歌や、「クスッ」となるような和歌が出てきます。
和歌は田辺さんによる現代訳も対で書かれているのでこれも「いとをかし」(=大変趣がある)なのでございます。
そして、登場人物たちの生き生きとした会話もとっても面白いんですよ。
その他、一夜を共にした後に交わす”後朝(きぬぎぬ)の歌”や、結婚の証として共にお餅を食べる婚儀”三日夜(みかよ)の餅(もちい)”などなど、、、。
今の時代と全く異なる昔の貴族の恋愛流儀や結婚の儀式はまさにディスカバージャパン!
まとめ
古典というと、どうしても堅苦しいイメージが先行しがちですが、この作品は千年もの間、人々に読み継がれてきた大変面白い大衆小説の一つです。
未読の方は、騙されたと思って是非手に取ってみてください!
最後に。
夢子的には、意地悪な継母”北の方”の行末が気になるところです・・・あの人、改心したんだろうか・・・。