いつだったかバレエ演目「ジゼル」の元になった物語、というのをどこかで目にしたのがきっかけで読んでみたのですが、、、実際読んでみると想像していたようなファンタジー的な小説ではなく、精霊や古代の神々に関して伝承民話を交えながら紹介する解説書?のような本でした。
作品紹介
【作品名】
流刑の神々(1853年)
精霊物語(1835-1836)
*岩波文庫(1980年)
【作者】
ハインリヒ・ハイネ(1797-1856)
キリスト教が仮借ない非寛容性をもってヨーロッパを席巻していったとき,大陸古来の民間信仰はいかなる変容をしいられたか。
引用元:岩波文庫https://www.iwanami.co.jp/book/b247693.html
今から一世紀以上も前,歴史の暗部ともよぶべきこのテーマに早くも着目したハイネは,これら二篇のエッセーでギリシアの神々と古代ゲルマンの民族神たちの「その後」を限りない共感をこめて描いている。
タイトルの通り「流刑の神々/精霊物語」と2篇に分かれています。
*尚、収録順序は「精霊物語」→「流刑の神々」です。
ちなみに岩波書店の作品紹介では2篇のエッセーと書かれていました。
普段、ジャンルの一つとしてなんとなく「エッセー(エッセイ)」という言葉を使っていましたが、、、改めて”エッセー”とは?と調べてみたところ↓とのことで、、、なるほど確かに本作はエッセーだ。
1 自由な形式で意見・感想などを述べた散文。随筆。随想。
2 特定の主題について述べる試論。小論文。論説。
〜goo辞書より〜
”ヴィリス”とは一体何者?
ちょっと話が脱線しましたが、その中の1つにジゼルのモチーフとなった精霊についても書かれていました。
その名は「ヴィリス」。
「それは、その地方で「ヴィリス」という名で知られている踊り子たちの幽霊伝説である。
ヴィリスは結婚式をあげるまえに死んだ花嫁たちである。
このかわいそうな若い女たちは墓の中でじっと眠っていることができない。
ーーー彼はヴィリスたちと踊らなければならない。
ーーーそして彼は休むひまもあらばこそ、彼女らと踊りに踊りぬいてしまいには死んでしまう。
引用元:岩波文庫「流刑の神々・精霊物語」より一部抜粋
このオーストリアのある地方に伝わる伝説に着想を得てバレエ「ジゼル」は作られたのだそう。
おとぎ話でお馴染みの登場人物たちも!
その他、お馴染みの「こびと」や、以前読んだ”水妖記”のモチーフとなった水の精「ウンディーネ」、シェイクスピアの”真夏の夜の夢”に出てくる「エルフェ」(人間の身近なところに住む小さな精霊)などなど、そのほか様々な精霊についての説明がありとても興味深かったです。
それから、ちょっと個人的に気になったというか「あれ、どこかで聞いたような?」というお話が↓
友人と球を打って遊んでいた騎士、指輪が邪魔だったので近くにあった大理石の像の指にさしておいたところ、、、球戯を終え指輪を取りに戻ると、なんと指から指輪が抜けない(先程はまっすぐだったのに、今は指が曲がっている)!・・・その後しばらくしてあの時の像とそっくりな女が、あの時自分の指に指輪をはめたのだから婚約したことになるのだ!と主張してきたのだが、、、
という感じのストーリーなのですが、、、どこかで聞いたことありません?
そう、私はティム・バートン監督の「コープスブライド」を思い出しました。
もしかして?と思い、(読んだ)当時ちょっと調べてみたのですが、特に関連付ける内容は出て来ませんでした、、、が、この手の民話って世界各国にありそうなので、少なからずこういった民話のようなものから着想を得たのかな、と勝手に思っている夢子です。
まとめ
後半に収録されている「流刑の神々」は、ギリシャ神話の”ゼウス”にまつわる物語などなど。
こちらちょっと切ない気持ちになりました・・・。あんなにやらかしてた最高神ゼウスが・・・。
本の説明(表紙)にも書かれているように、それまで人々に多大な影響を与えて来た古代ギリシャの神々や精霊たちが、キリスト教の勢力に追いやられ、どのような変化を強いられたか、というのがこの本のテーマなのだと思います。
「流刑の神々/精霊物語」どちらのお話も、読み始めて数ページは難しそう・・・読めないかも?と思いましたが、慣れてきたらとても面白く、最後まで夢中で読むことができました。
神話やおとぎ話が好きな私にはわくわくです。
ちなみに、解説によると柳田国男もこのハイネの「流刑の神々」に大きな感銘を受け、そして影響を受けているのだそうですよ。
最後に、、、
この本の訳者”小沢俊夫”さんですが、小澤征爾さんのお兄様だそうです。
まさに「華麗なる一族」ですね!