赤いギンガムチェックが可愛いこちらの本は、先日投稿した氷室冴子さんの「マイ・ディア~親愛なる物語」の中でも紹介されている「十七歳の夏」(1942年)。
アメリカ人作家モーリン・デイリ(1921-2006)によって書かれた青春小説です。
小説の舞台は1940年代のアメリカの田舎町
物語の語り手は、、、
高校を卒業し、大学進学を控えている17歳のアンジイ
ある日、アンジイは家業のパン屋を手伝っている同じ年のジャックと出会い、デートに誘われます。
奥手の彼女にとっては初めてのデート。
しかも、相手は高校時代、バスケットボールのスター選手で有名なイケている男の子です。
デートには何を着ていったらいいんだろう?何を話したらいいんだろう?デート慣れしている他の女の子達の振る舞いを見ては、自身と比べて自己嫌悪に陥ったり・・・
というような感じで、この小説は17歳の女の子の初めての恋についてのお話です。
デートと言っても、ドラッグストアにコカ・コーラを飲みに行ったり、パン屋のトラックでドライブをしたり、映画を観たり、ジュークボックスの音楽に合わせてダンスを踊ったり・・・アメリカ文化史的に興味深いところはあるけれど、特にドラマティックなところはありません。
だけど、すごくロマンティックなのです。
その背景には、湖面を渡って吹いてくる湿っぽい風や、細くて黄色い三日月や、深い木立ちが影を落とす野原があって、そんな自然の中で、アンジイとジャックは恋(というには幼い感じですが)を育んでいきます。
指が触れたといってはドキドキし、手をつないでは胸をときめかせ・・・というように十七歳の夏でなければ感じられないものを感じるのです。
「十七歳の夏ほどすばらしいものは、再び来ないだろう」
物語の最後の方でアンジイはそう悟るのですが、この小説の良さはまさにこの言葉につきます。
所謂、青春小説ですが、ティーンエイジャーだけの読み物にしておくのはもったいない!
色々なことを経験した大人だからこそ感じるものがあるのではないでしょうか。
ずっと手元に置いておきたい大切な一冊です。
(無謀にも英語版も購入)