”コバルト文庫”・・・なぜか甘酸っぱい気持ちになるその響き・・・。
「氷室冴子」という名前は80年代、90年代に青春時代を過ごし、コバルト文庫に少しでも親しんだことがある人なら知っている方も多いのではないでしょうか?
コバルト文庫
株式会社集英社の文庫レーベルである。
最初期を除き現在に至るまで、少女向け小説(少女小説、ライトノベルと称される)を中心に扱っている。
〜wikipediaより〜
その昔、少女だった夢子は、氷室さんの作品を夢中になって読んでいました。
古典の扉を開いてくれた『なんて素敵にジャパネスク』『ざ・ちぇんじ!』、“ボーイミーツガール”のジュブナイルもの『なぎさボーイ』『多恵子ガール』や、未完の古代ファンタジー『銀の海 金の大地』、、、などなど。
物語の中の主人公の姿に自分を重ね合わせて、元気をもらったりワクワクしたり。
『マイ・ディア 親愛なる物語』(1990年)は、そんな氷室冴子さんによるブックガイド・エッセイ
『マイ・ディア』では、氷室さんが愛読していた<家庭小説>(海外翻訳)の名作の数々が紹介されています。
【家庭小説】とは「家庭に題材を求め、女性を主たる読書層とする通俗的な小説を指す」
〜『氷室冴子とその時代』嵯峨景子より〜
本書では『赤毛のアン』『秘密の花園』『あしながおじさん』などが取り上げられていますが、文学史的には決して評価が高いとはいえない<家庭小説>というジャンルを、氷室さんは作品だけでなく、女性作家にも温かい目を向け、リスペクトを持って紹介しています。
例えば「オルコットかモンゴメリか」の章では、下記のように書かれています。
「今よんでも、百年前の<家庭小説>の主人公たちは、みんな意識的で、理想にもえ、社会に有益な人間になろうと努力する、涙ぐましい女の子ばかり。
それは、みえない偏見と闘いながら、書くことをやめなかった女性作家の、理想の女の子像でもあったのでした」
<家庭小説>の作家が活躍したのは19世紀後半から20世紀初めですが、自身の姿と重なる部分もあったのでしょうか。
そして「マイ・ディア」は、<家庭小説>を愛する氷室さん自身が出版社に企画を持ち込み実現したレーベル「角川文庫マイディアストーリー」のために書かれたそうです。
表紙からして、赤いギンガムチェックで可愛い!
さすが、氷室冴子!乙女心が分かってる!
数々の家庭小説のクラシックがラインナップされているのですが、中でも『十七歳の夏』や『リンバロストの乙女』は、「マイ・ディア」を読んで初めて知り、大好きになった小説です。
残念ながら、氷室冴子さんは2008年、病気のため51歳の若さでお亡くなりになりました。
家庭小説はもちろん、氷室さんを通して知った文学作品も多いです。
多感な思春期の読書体験を豊かにしてくれた氷室さんには、心から感謝しています。